
●牧野愛博記者プロフィール●
1965年生まれ。91年朝日新聞入社。
瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金客員研究員、ソウル支局長などを経て、2021年4 月より朝日新聞外交専門記者(朝鮮半島・日米関係担当)。
取材裏話の牧野記者よりメッセージ
いつも裏話への感想やご意見ありがとうございます。最近、ニュースレターを始めました。登録は無料ですので、もし私の記事にご関心があるようでしたら、ご登録していただけると嬉しいです。
牧野記者が読み解く世界の安全保障朝日新聞の牧野愛博記者による解説コラムです。安全保障や国際問題など幅広いテーマで定期的に配信します。
※お願い※
取材裏話を寄稿してくださる牧野記者が、皆様の感想を楽しみにしております。是非、ご感想・ご意見・ご要望をお寄せください!牧野記者にお届けいたします。
牧野記者へお便り
![]()
2025年8月
日本最東端の島
6年ほど前に取材で訪れた南西諸島・与那国島には「日本最西端の島」の碑があった。与那国は、台湾まで111キロしか離れていない。一方、「日本最東端の島」は、南鳥島(東京都小笠原村)だ。東京都心から南東に約2千キロ離れている。
ところで、戦前の「日本最東端の島」はどこだっただろうか。答えはグアムから東に約3千キロ離れたマーシャル諸島。日本が第1次世界大戦を契機に、領有していたドイツから奪い、国連の信託統治領として認められていた。日本との時差は3時間。単純に考えれば、日本よりも3時間早く太陽が昇る場所ということになる。差別用語が含まれているとして放送禁止になったが、1930年(昭和5年)に発売された「酋長の娘」は、マーシャル諸島を舞台にしてヒットした。実際、マーシャル諸島は、今では「伝統的首長」という表現を使うが、「イロージ」「エロージ」という一種の貴族を頂点とした社会を維持している。
マーシャル諸島は29の環礁(ラグーン)と5つの独立した島で構成されている。「ダーウィンの沈降説」を採れば、数万年前は島だった。火山活動を繰り返すうちに、島が海面下に沈み、島の周囲にあったサンゴ礁だけが残った。サンゴ礁に単細胞生物の有孔虫の死骸が集まって「星の砂」になり、そこに鳥がフンを落として土壌を作った。そこからヤシの木が生え、他の場所から海を渡ってやってきた人々が定住した。

マーシャル諸島の首都があるマジュロ環礁を上空から眺めると、細長い輪のような形をしている。真ん中の島が沈んだ部分が漁に適した静かな海面、ラグーンだ。マジュロ環礁に降り立てば、両側に海が迫ってくる場所も多い。レストランも数えるしかなく、観光客の姿もほとんど見ない。マジュロ環礁から飛行機で40分ほど離れたクワジェリン環礁では1944年1月から2月にかけ、日米両軍の激しい戦闘があった。今ではここは米陸軍クワジェリン駐屯基地となり、ICBM(大陸間弾道弾)の発射実験場も備えている。
また、マーシャル諸島は知らなくても、ビキニ環礁の名前なら聞いたことがある方も多いかもしれない。マーシャル諸島のビキニ環礁とエヌエタック環礁では1946年から58年にかけ、計67回の核実験が行われた。54年3月のブラボー水爆実験では、付近を航行していた日本のマグロ漁船「第5福竜丸」が「死の灰」を浴びて被曝した。ビキニ環礁の人々は故郷を追われた。
日本人が色々な思いにとらわれる南の島。日本人によく知られた観光地のハワイとグアムの中間ほどの位置に、こんな島もある。戦後も、はや80年。人間の平均寿命と同じくらいの歳月が経ち、日本との縁も薄れていく一方なのかもしれない。
朝日新聞社 牧野愛博(よしひろ)





















朝日新聞取材裏話2025年9月


