●牧野愛博記者プロフィール●
1965年生まれ。91年朝日新聞入社。
瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金客員研究員、ソウル支局長などを経て、2021年4 月より朝日新聞外交専門記者(朝鮮半島・日米関係担当)。
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2018年3月 韓国の制服
この4月から長男が日本人学校の中学部に上がるため、制服を買いに出かけた。中学部に別に制服はないのだが、始業式や終業式などの際は、男子はブレザーにネクタイという格好が必要なのだそうだ。妻が聞いてきたところでは、周りの日本人学校に通っている生徒たちは、近くの韓国人向けの制服(韓国語では教服・キョボクと呼ぶ)を売っている店で適当な制服を購入し、学校のマークを取って使っているのだそうだ。
長男と一緒に出かけた制服店は、今度中学生になる韓国人の親子で混雑していた。長男が気に入った、紺色のブレザー1着、グレーのズボン1本、シャツ2枚、ネクタイ1本を買うことにし、試着させてみた。
試着室に入っている長男を待っている間、何げなく店内に貼り出された制服を宣伝するポスターを見てびっくりした。ポスターのなかでは制服モデルの若い男女7人ぐらいがポーズをつけて立っていた。モデルたちは茶髪あり、金髪あり、メイクばっちりだ。制服もボディーラインを強調したり、その逆だったり、誠に自由奔放な格好で微笑んでいる。
10年前に特派員だった頃、「Sライン教服ブーム」を取材したことを思い出した。当時、女性のボディーラインを強調する制服が「Sライン教服」として女生徒・学生たちに人気になって、心配する教育界や父母らが一斉に反対する声を上げたというような内容だった。
自宅に戻って妻に話すと、さすがに色々なことを知っていた。
韓国の場合、小学校ではまず、ほとんど校則がないのだという。逆に中学は校則が厳しい。だから、小学校のうちに自由な空気を吸わせようと、子どもは茶髪にしたり金髪にしたり、色々な格好をするという。高校も私立が増えるせいか、また校則は自由になる傾向がある。確かに街ですれ違う女子高校生たちは結構、口紅などをしておしゃれしている。
韓国も日本と同じように「非行」や「家庭内暴力」がある。でも、校則が緩いからと言って、日本に比べてものすごくこの問題が深刻ということでもないようだ。
韓国は日本に比べ、周囲の空気を読まないというか、自由な気風がある。街で横一列に歩いているのも、日本人から見れば、「周囲に気を配らないわがままな奴ら」ということになるが、韓国人にしてみれば、「君も自由に歩いてみれば良いんじゃないの。そんなに周囲に気を遣わなくて良いんだよ」となる。
韓国が最近、2015年12月に合意した日韓慰安婦合意を否定してひんしゅくを買っているが、これもある意味、こうした「韓国人気質」が影響しているんじゃないかと思う。
(朝日新聞社 牧野愛博)