●牧野愛博記者プロフィール●
1965年生まれ。91年朝日新聞入社。
瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金客員研究員、ソウル支局長などを経て、2021年4 月より朝日新聞外交専門記者(朝鮮半島・日米関係担当)。
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2020年8月
デジタル取材で四苦八苦
新型コロナウイルスへの感染拡大が止まらない。私の仕事もなるべく対面を避けて電話やメールを使った取材が増えている。
先日、BSテレビでお話をさせていただく機会があった。スタジオに入ったら、私だけスタジオ内の小さな個室に案内された。「密を避けるため、申し訳ありませんが、ここからリモート出演してください」と言われた。結局、小さなカメラを前に話すことになって苦労した。モニターはカメラの下にあるのだが、そこに視線を落とすと、うつむいてしゃべる格好になるため、どうしてもカメラに視点を合わせざるをえない。相手の表情がよくわからないので、どうにもしゃべりづらかった。
取材ともなると余計難しい。通り一遍のインタビューなら電話やメールでも大丈夫だが、何とか秘密めいた話を聞き出そうとすると、それなりにテクニックがいる。例えば夕食なら、2時間くらい一緒にいることになるので、そのなかでヤマを3回ぐらいつくり、雑談をしながら、さりげなく話題を振る。相手の表情を見ながら、しつこくしないように、少しずつ聞いたりもする。時間があれば、こちらから一方的に聞き出す格好にせず、自分が知っている話も織り交ぜながら情報交換できる。そうなれば、相手も更に話しやすくなる。電話やメールだと、そういうわけにはいかない。用件だけ聞く格好になるから難しい。
雑談から思わぬヒントをもらうこともある。かつて、噂話のつもりで共通の知り合いの人事の話を振ったら、その人事の背景に永田町の思惑が絡んでいることがわかって驚いたこともある。
また、食事をした仲ともなれば、人間関係も作ることができる。その場限りではなく、数年後に再開して大いに助けられたという経験を何度もした。
コロナは、新聞記者稼業にも本当に迷惑な存在だ。
(朝日新聞社 牧野愛博)