
●牧野愛博記者プロフィール●
1965年生まれ。91年朝日新聞入社。
瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金客員研究員、ソウル支局長などを経て、2021年4 月より朝日新聞外交専門記者(朝鮮半島・日米関係担当)。
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2026年6月
高市首相の面会基準はどこにある
「高市早苗首相が会食や面会を必要最小限に絞っている」。様々なメディアがこうした指摘を続けている。私が最近会った、某国の大使も同じ心配を抱えていた。大使たちは赴任前、首相に会わなければならない明確な理由がある。政府は従来、大使が任命されると、その時点で辞令が出た人々がまとまって、赴任前に首相と面会するのを慣例としていた。そこで、大使と首相のツーショットの写真も撮影する。
これは、業務上、大きな助けになる。私も各地の大使や総領事公邸にお邪魔したことがあるが、大体、そこで大使や総領事と時の首相とのツーショット写真が飾られていた。これは自分を大きく見せるためではない。公邸に面会や会食で訪れた人々が、この写真を見て、「この人は日本の首相と話ができるほど、近い関係にあるのだ」と理解(ある意味では誤解)してくれる効果を狙ったものだからだ。
日本でも米国や韓国など、日本と関係が深い国の大使が新たに赴任すると、一番注目するのは「本国の大統領や首相などのトップとどのくらいパイプがあるのか」という点だ。有名人であるかどうかは関係ない。日本の考えをすぐに相手国のトップに伝えてもらえる実力がある人が重視される。そのような大使には自然と多くの日本人が吸い寄せられる。
知人の某国大使の場合は高市首相が就任してからの任命ではなかったので、問題はなかった。某国大使は「ツーショット写真を撮れなかった大使が本当に出たかどうかは知らない。でも、明らかに、総理は相手のランクで面会を絞っているような気がする」と語る。歴代首相が外遊に出る場合、外務省の地域担当局長がブリーフィングしていた。今は自由に会える外務官僚は外務次官と外務省出身の国家安全保障局長くらいで、局長は次官に連れて行ってもらうという形でなければ、面会が叶わないようだ。
個人的な推測だが、ここまで話を聞くと、高市首相は人嫌いということではなく、「相手のランク」で面会者を絞っているようだ。もちろん、肩書は重要だ。首相が政策判断をする際に、偉い人は必要な重要情報や助言をしてくれる可能性は高い。その一方で、高市首相は「自分が必要とする人」には会うが、「自分(首相)を必要としている人」に配慮しないような気がする。それがメディアなどで時々目にする、「自分の意見にこだわる」「相手の意見を傾聴しない」姿勢に表れているのではないか。
過去の政治家の歴史をひもとけば、無私の姿勢を貫いた人は総じて名を残している気がする。政敵に対する粛清で悪名高い北朝鮮の金日成主席だが、「視察中、疲れた表情で歩いていた老婆を自分の車に乗せて自宅まで送り届けた」「いつも視察先で、労働者が食べている物と同じ物を食べた」などの理由で、一般市民には抜群の人気を誇った。もちろん、政治的な意図もあっただろうが、金日成が本当に農民や労働者の暮らしを心配していたのも事実だったようだ。
高市首相がトランプ米大統領の横でぴょんぴょん跳びはねる姿は、私のような昭和世代には受けが悪いが、若い人々には「政治家らしくない」という理由で評判が良いそうだ。しかし、根底に他人を愛する姿勢がなければ、その人気も長続きしないだろう。
朝日新聞社 牧野愛博(よしひろ)





















朝日新聞取材裏話2026年7月


